続き…
その返答が帰ってきたのは、昼休みになってからだった。
にぎやかな喧騒の中、昼飯を食べ終えて休み時間が終わるまで惰眠を貪ろうと机に突っ伏していた織田に、すぐ側からトーンの低い声がかかった。
「おい…」
折角眠りにつけそうだったのにと顔を上げれば、机の横で無表情で仁王立つ叶の姿が目に映る。
「…おー、叶か…。なんやぁ?」
ふぁあとあくびをしつつ尋ねると、見覚えのある白い箱を机の上に置いた。
それは、以前貰った誕生日プレゼントのお返しとして、朝練の前に、わざわざ回りくどい事をしてまで織田が叶の鞄に入れたものだった。
なぜそんなことをしたのかと問われれば、それは悔しかったから。
大雑把そうに見えて、意外ときちんと人のことを見ている、そんなことを気付かされた挙句、自分じゃないように振舞う辺りがものすごく。
だから叶の誕生日には、完全犯罪のようなお返しをしてやろうと思っていたのだ。
それが今日、叶の誕生日だったのだが、こうも見事にばれるとは思いもしなかった。
まじでかと内心驚きつつ、表情には出さないように勤めて冷静に箱と叶を交互に見た。
「これがどうしたん?」
「これ、お前か…?」
「あぁ、そやけど?…って、あ、礼はエエで。気持ちやから」
そう言って笑った織田を叶が鋭い目で睨みつけた。
そして思いも寄らぬことを叶は言ってきた。
「……ケンカ売ってんのか、お前…?」
それまでぼやけていた頭が一瞬でクリアになる。
「はぁ!?何でそうなんねん!」
好意でしたのに、どうして睨まれねばならないのか。
皆目見当がつかない。
さらに告げられた一言に織田は驚かされた。
「だってコレお前、嫌がらせだろ!?」
「はっ!?」
なぜそうなるのか。
第一中身は以前叶に貰ったのが食べ物だったので、同じく織田も食べ物を入れていた。
だから嫌がらせなんて言われるものでもないし、入れたつもりもない。
「ちゃうわ!」
「違うのか?」
「当たり前やろ!」
「だったら、何でコレ持ってきたんだよ?」
問われて、織田はうっと言葉につまった。
面と向かってそう訊かれると、逆にものすごく恥ずかしかった。
正直に答えれば、自分の今までの行為をあけすけに言ってしまうことになる。
しかし、このまま誤解されてままでいるのも、かなり癪だ。
仕方ないと、顔が赤くなるのを少し感じつつ、織田は叶から目をそらして、その真相を告げた。
「せやかて、今日、お前の誕生日やろが」
「……は?」
その反応に織田が拍子抜けする。
「お前忘れとったんかいな。…今日7月12日やで」
「……あ」
合点がいったのか、叶が声をあげる。
「あ、てな…。せやから、前に俺もお前からもろたから、そのお返しや」
そしてふっと一息ついてから、なんで織田はまた話し始めた。
「けどな、お前の好物なんて俺よう知らんかったから、畠にお前はなんでも食うんかて訊いたってん。そしたらおはぎが好物やーってな」
「そ…なのか…」
「おう」
答えて、織田が開き直ってそらしていた目を叶に向けた。
しかし、それは叶が俯いていたため合うことは無く、そのため表情を伺うことも出来ない。
「……じゃ、始めからそう箱に書いとけ!箱開けたらでかいおはぎが丸々一個入ってるから嫌がらせだと思ったろうが…」
「は?なんでおはぎが入ってたら嫌がらせになんねん?好物ちゃうんか?」
「………」
「おい?」
下げていた顔を上げて、言いずらそうに叶が口を開いた。
「あー…、俺昔っからおはぎ…つーか小豆系全部ダメなんだよ」
「はっ!?嘘やろ!」
「嘘じゃねぇよ!つーか嘘ってなんだよ!?」
「…あ、いや…、あ?じゃ、なんで畠…」
畠の名前に叶がうっと顔をしかめた。
(なんや?)
「……それなぁ…」
何かを思い出したのか顔を更にしかめて、言いたくなさそうに話し始めた。
「だいぶ前に俺、畠ん家行ったことあってよ。」
「ふぅん…、で?」
「そん時のおやつにおはぎが大量に出てきて…」
「おお…」
「いつもなら絶対食えないって謝ってでも返すんだけど、その時出てきたおはぎが実は畠のおばさんの手作りでよ」
「………」
なんとなくその後の展開が読めて、だんだんと渋い顔になりながら黙って頷いた。
「食べられないとも言えなくて、そのまま置いておいたら畠のおばさんが『叶君はおはぎ嫌い?』とか言われて…」
「嫌いやて言えんくて食べたんかいな…」
「………食べた」
「そやったんか、でもそれが何でお前がおはぎ好きやって事に繋がんねん?」
「お前まだ聞くのかよ?」
「ここまで聞いたんやし、いいやろ?」
しぶしぶとまた叶が口を開いた。
「………俺がおはぎ食った時畠のおばさんがどこをどう見てそう思ったのか知らねぇけど、『美味しそうにおはぎ食べてくれて嬉しいわ』って、その後大量におはぎ持ってきて」
(……うわっ…、それは…)
畠の母に悪気がないのはわかってはいるが、彼女のなんともいえない酷い仕打ちが苦しい。
「引っ込みつかなくて食ってたら、『いっぱい食べてくれて嬉しいわ』って帰りに更におみあげでおはぎ貰った……」
叶を襲ったおはぎ地獄に自分のことではないのに、自分のことのように泣けてくる。
「それ以来、俺はおはぎが見たくないくらい嫌いになったんだよ…!」
「……そ、か…」
(嫌いになってもしゃーないわ…)
「じゃ、悪いことしたな…。それ食えんやろ?俺持って帰るわ。今度何か奢ったるからそれで堪忍な?」
そう言って箱に手を伸ばした織田の手をするりとよけて叶は自分のもとへ引き寄せた。
「あ?なんでやねん?」
「これは俺が貰ったんだから、お前には返さねえ」
「は?なにゆうてんねん!お前それ食えんやろが!」
「いいんだよ!俺が貰ったもん俺がどうしようと勝手だろ!?」
「はぁ……」
訳がわからない。
(何がしたいねん…)
「……じゃあ、勝手にしいや」
「おー、そうする」
そう言って叶は箱を持ったまま出て行ってしまった。
「……食えんのに持ってってどうすんねん…?」
あ、そうか。
「あいつなりの優しさっちゅーやつか?」
素直に言えないあたりがなんとも叶らしい。
だが。
「アホか」
もう何をしても叶にはかなわない気がして、織田は昼休みが終わるまで不貞寝を決め込み、机に突っ伏した。
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『work』のオダカノの織田のお返しverです。
えせ関西弁!(誰か教えてください…!)
ホントキモイ!
キモくてものが言えない!!
しかも長いのがキてる…。
もう、何がしたかったんでしょうかね…。
この頃の自分の情熱がわからない…!
とりあえず、ブログには拒絶されました!(文字制限オーバーで)
悲しいを通り越して笑える。
お目汚し失礼しました!!!!!